北志賀(長野県栄村) 屋敷山(1460m)、布岩山(1495.1m) 2015年10月17日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 6:50 登山口−−8:14 稜線−−8:57 屋敷山−−9:35 1320m鞍部−−10:27 1480m峰−−10:59 布岩山 11:33−−11:44 枝尾根を下る−−11:50 ミスに気づいて戻る−−12:10 稜線に戻る−−12:16 東尾根に入る−−12:28 尾根を間違える−−12:40 尾根を間違える−−12:55 ミスに気づいて戻る−−13:13 正しい尾根に乗る−−13:26 尾根を間違える−−13:34 尾根を間違えに気付きトラバース−−14:07 1030m峰−−14:21 林道−−14:26 休憩 14:30−−14:57 登山口

場所長野県下水内郡栄村
年月日2015年10月17日 日帰り
天候曇後雨後曇
山行種類一般登山→籔山
交通手段マイカー
駐車場鳥甲山登山口付近に駐車余地が分散して存在する
登山道の有無登山口〜稜線まであり。稜線以降は道無し
籔の有無登山道を離れてからは標高がかなり落ちるまではずっと藪漕ぎ
危険個所の有無布岩山東尾根は入口は藪で見えず傾斜が急で微小尾根分岐多数でミスると行き詰る。非常に間違えやすい地形と植生
山頂の展望どちらの山頂も無し
GPSトラックログ
(GPX形式)
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コメント鳥甲山屋敷登山口より稜線に出て、登山道を離れて尾根を北上し布岩山へ。帰りは布岩山東尾根を下って林道に出て登山口に戻った。登山道から屋敷山間は距離は短いが蔓が絡んだ灌木と笹の藪で藪の濃さ以上に苦労。蔓を切断するためのナタ必携。酷いのは屋敷山周辺。屋敷山〜布岩山間は概ね歩きやすいが布岩山平坦部は根曲竹激籔。読図困難で方位磁石必携。三角点は台地北端にあるがなんと刈り払いされていた! 北尾根に刈り払い形跡と目印あり。帰りに使った東尾根は藪で入口見えず高度計が使えなかったため最初からミス。登り返して正しい尾根に乗っても傾斜が急で藪で前は見えず同じ規模の微小尾根分岐が多くミスを連発。目印無し&GPS無しで下りで使うにはあまりにもリスクが大きかった。地形図で見るよりも現場の傾斜はきつく岩場もあり尾根を外すと行き詰る可能性大。この尾根を下りで利用することはお勧めできない。




屋敷トンネル入口の駐車余地 登山口に一番近い駐車余地
鳥甲山 屋敷登山口 登山ポスト
登山口の案内標識。なんと屋敷山〜布岩山間に道があることになっている!
最初から急な登りが始まる 苗場山方向。雲は多いが青空も見える
紅葉がいい感じ 大きな堰堤が数か所ある
紅葉の中を登る 南ほど雲が多いようだ
布岩山に続く稜線に出た でも稜線上に道の形跡皆無
蔓が絡んだ藪でやっかい。ナタを振るう 前方のピークが屋敷山
ここも蔓籔地獄 屋敷山山頂付近で蔓籔が薄まる
屋敷山山頂。アスナロあり 屋敷山の下りから石楠花登場
このピークが布岩山手前の1470m峰 まだ石楠花の下りが続く
布岩山も紅葉がきれい やっと石楠花から解放、薄い笹で歩きやすい
1320m鞍部。藪が薄い 屋敷山を振り返る。雨が落ちてきた
獣道あり たまに低い笹

今回活躍したナタ 尾根上は2か所で露岩があるが登る必要なし
傾斜が緩やかになると藪が濃くなる 1470m峰の一角。根曲竹が濃い
1470m峰。平坦で最高点不明。根曲竹濃し 濡れた根曲竹の海を平泳ぎ
布岩山最高点。藪の中 布岩山最高点の僅かに北側が三角点
三角点周辺は刈り払いあり 布岩山三角点
白身魚ロールを食す ピンクリボンの附いた木に赤テープを残す
北尾根に目印が続く 軽い刈り払いも続く
ペットボトル ペットボトルを包装していたビニールか?
ここから枝尾根を下ってしまった 途中の岩。右を巻いて下る
ここで右手に正しい尾根を見てミスに気づく 急斜面を登り返すのは疲れる
稜線に戻って東尾根入口を目指す ここが東尾根入口。全く尾根が見えない
東尾根下降中。灌木藪が主体となる 微小分岐多く、間違えた尾根から主尾根にトラバース中
標高1400m付近 標高1320m付近。枝尾根に引き込まれる
枝尾根下降中。この状態なので先は全く見えない ここでミスに気付きUターン
隣の尾根に乗り移る。東尾根はもう一つ先 東尾根との間は絶壁状態で尾根を登り返す
東尾根に復帰。正しい尾根は細い灌木が多い 標高1200m付近。ここでも微小尾根に引き込まれるがすぐ気付く
標高1120m付近。尾根直上を外している 標高1100m付近。植林を南へとトラバース中
標高1060m付近。目的の尾根に乗った 標高1040m付近の尾根平坦地
1030m峰。ブナの倒木あり 1030m峰手前の鞍部から浅い谷を下る
ワイヤーロープあり 沢の左岸をトラバース気味に下る
堰堤登場。林道は近い 林道到着!
ここから林道に出た 苗場山。雨は上がって晴れてきた
長時間ルートファインディングで疲れ、林道上で休憩 布岩山南側は岩壁帯
見事な柱状節理 熊の落とし穴とは何だろう?
クライミングのゲレンデになっているようだ ほぼ垂直のクラックを登攀中
登山口到着。今日は体力的、精神的に疲れた!


 鳥甲山周辺には登山道がない超マイナーな山がいくつかあるが、屋敷山、布岩山もそんな山。鳥甲山の北側に位置する。屋敷山の近くまで登山道があるが、北に続く尾根上には道は無く、標高、地域から考えて深い藪に覆われているだろう。登るなら残雪期が基本だがアプローチとして有効な五宝木付近は春は除雪されず、登るなら秋山郷側しかない。しかしそちらの斜面は急で滑落のリスクが大きいし、安全優先で未除雪の林道を歩いて五宝木トンネルまで行くのもなんだかもったいない。距離的には登山道からそれほど遠くはないので無雪期でも行けるだろうと考えた。

 布岩山だけ登るなら北尾根の電波塔マークがあるところから藪に突入するのが良さそうだが、屋敷山を合わせて登るなら鳥甲山登山道から入る必要がある。布岩山へ達してからは東尾根を下って林道に出られればいいが、地形図を見る限りは入口がはっきりしないし傾斜が急で下りのルートファインディングの難易度は最高ランクに思えたため、計画段階ではピストンで登山道まで尾根を逆戻りすることにした。

 長野市から鳥甲山屋敷登山口までカーナビによると約100km。東京と違って近い。カーナビは飯山経由のルートを示したが、考えてみれば志賀高原から雑魚川林道を抜ければもっと近かっただろう。まだ長野の土地鑑が無いのでこんな判断もできない。長野市内を抜ければ車の流れは順調で2時間半で登山口に到着。満天の星空で明日の天候も期待できそうだ。

 登山口から少し離れた駐車場所に置いたので、早朝の登山者の動きに邪魔されることなく寝られた。空を見上げると雲が多いが隙間も多く雨の気配はない。天気予報では関東は雨だが新潟地方は晴れの予報。絶好の藪漕ぎ日和だ。

 朝露で藪が濡れている可能性が高いのでゴアを持つのは当然としてロングスパッツにまだ防水性がある登山靴で出発。最近の藪漕ぎで懲りているので今回もナタを装備。蔓藪対策に欠かせない。念のためお助けロープを1本持つ。

 登山口付近は大きな駐車場は無く、林道の路肩が広がった場所に駐車する形。今朝は3台ほどと自転車1台。もう皆出発して人影はない。

 登山口には登山ポストの他に簡単なルート図が書かれた案内看板があり、それによると屋敷山〜布岩山の尾根上には歩道があることになっている! まさかそんなことがあるのか? 前日に軽くネットで調べたが布岩山の登山記録はヒットしなかった。登山道があればそんなことはあり得ないのでこの情報は嘘だろうが、もしかしたら昔は道があって道形が残っているかもしれない。だとしたらまっさらな藪より漕ぎやすくて助かる。登山届には正直に行き先を屋敷山、布岩山と記入した。

 登山道は最初から急だ。ここは稜線までほぼ一直線に高度を上げるので全体的に登山道は急坂の連続だ。周囲は紅葉の真っ盛りで目を楽しませる。まだ高度は低いので地面付近の藪は薄いが尾根上はこうはいかないだろうなぁ。

 土の急坂で滑りやすい登山道をグイグイ登っていく。よく整備されて体に触れる藪は無し。お隣の苗場山が百名山なので鳥甲山は百名山ではないだろうが、有名どころの山なので登山者が多く栄村が手入れしているのだろう。

 急坂を登りきると尾根に出る。地形図では1452.8m三角点てっぺんということになっているが、実際は鞍部付近に出て北側が高くなっていた。おそらくこのピークが三角点峰だろう。さて、登山口の看板に出ていた布岩山への歩道は存在するか? あちこち探してみたがそのような形跡は皆無で笹と潅木に覆われていた。やはりそんな道など存在せず計画どおりこの先は藪漕ぎだ。

 藪が薄そうな場所から取り付く。まだこの辺はそれほど藪は濃くないので支障なく登れる。なだらかなピークに到着して少し周囲を見渡したが三角点は見当たらず。残念ながらGPSには三角点の位置は入力しておらず、このピークが本当に三角点峰なのか不明なこともあって深追いせずに先に進む。

 しかしこの後が地獄だった。今までより笹は濃くなったが激藪レベルではなくそれだけならまだ良かったのだが、笹に絡んだ蔓が最悪だった。先週の八方山山頂の藪を連想させる。それが短距離で終わらず延々と続く。蔓藪の突破は力ずくでは無理で、粘りがある蔓に跳ね返される。このために今週もナタを持ってきたので早速抜いて体に引っかかる蔓は全て切断する。藪が深い場所でナタを持ったまま歩くのは藪でこけたときに刃で怪我をする危険があるのでやりたくないが、これだけ蔓がひどいとそうも言っていられない。蔓は柔らかいので直角にナタを振り下ろしても「糠に釘」で切断できず、斜めに切断するのがコツだ。笹も同様に斜めならカット可能だった。

 ナタの利用で少しはマシになったが進行速度は大幅に低下。この状況が布岩山まで続くようならとても山頂まで届かない。それどころか屋敷山で精神的限界にきてしまう。その屋敷山山頂は三角点峰から350mしか離れていないが、この蔓藪地獄の連続で約45分もかかってしまった。屋敷山山頂に近づいてからやっと背の高い樹林に覆われるようになり蔓藪から開放された。

 屋敷山山頂は地面付近は石楠花、頭上は大きなアスナロが生えた場所だった。藪に覆われて展望はないが、山頂部は笹はないので近くの地形は見える。ここは明らかに周囲より高く最高点に間違いないが人工物は皆無。登山道からそれほど遠くないが訪問者皆無らしい。せっかくなのでアスナロの枝に赤テープを残した。でもこれを目にするのはDJF氏くらいだろう。この藪では普通の神経の持ち主では無雪期はまず無理。残雪期を狙うしかない。

 ここでこの先をどうするか悩む。この先の尾根の植生は当然ながら不明だが、先ほどの蔓藪が待ち構えていたとすれば想像を絶する苦難が待ち構えている。布岩山だけを登るなら北尾根を登った方がいいのではと強く思えるようになった。これは北向きの尾根の方が藪が薄い確率が上がるからだ。蔓は日当たりの悪いところあまり存在しないので、北尾根往復だと蔓に出会わない確率は今のルートより高いと思われた。ただし残り時間はまだたっぷりある。この先を全く確認しないで戻るのも癪なので、どこまで気力が持つか分からないが計画どおり北上することにした。

 下り始めると蔓はないが今度は石楠花が連続。尾根が細いので左右に迂回できず、尾根直上で石楠花を掻き分けたり踏みつけたりして下っていく。帰りにこれを登ることを考えるとブルーになり、弱気の虫が頭をもたげるがまだ時間はあるさと藪漕ぎ続行。

 高度が落ちると石楠花から開放されて薄い笹の尾根に変わり劇的に歩きやすくなった。潅木も大したことはなく獣道も登場。ここで精神力も回復しこのまま布岩山を目指すことにした。鞍部付近も同じように歩きやすく、登りにかかってからしばらくも同様で笹の中の獣道を追って登っていく。徐々に笹と根曲竹が濃くなっていくがまだまだ許容レベルで最大の敵、蔓が登場しないのが助かる。

 笹を漕ぎながら歩いていると予想外の雨。見上げると雲はそれほど厚いとは思えない明るい曇りだが細かな雨が降っている。徐々に笹の葉が濡れだしてゴアを着用。今年初めてゴアを雨具として使ったかもしれない。一時的でそのうち止むだろうと思ったがなかなか降りやまず、大降りはしなかったが笹がたっぷりと露をため込むには充分な量だった。まさかの濡れた藪漕ぎになるとは・・・・。布岩山を諦めて戻りたい気持ちはあるが、ここまで来たら戻る方が時間がかかる。だったら布岩山山頂を踏んでから戻りたい。

 標高1450mを越えて傾斜が緩むと根曲竹が一気に濃くなり前方が見えなくなった。1470m峰手前から平坦地が続くので尾根を読むのが困難になり進路は要注意。頻繁に方位磁石で進行方向を確認する。まだ僅かに獣道が見られるのでそれを利用しつつ、方向がずれたら修正する繰り返しだった。とにかく前が見えないので山頂までの距離はGPSが示す残距離表示だけが頼りだ。

 平坦区間も少しは蔓があるが屋敷山と比較すればずっと少なくナタの出番もほとんど無かった。しかし雨に濡れた根曲竹が濃い。手袋は防水タイプではないので既にびしょ濡れだが今日は気温が高いので指先は冷たくはない。

 GPSの残距離表示が100mを切っても前進速度は上がらず、なかなか前に進まない。この根曲竹藪や屋敷山の蔓藪を考えると帰りもこれを突破するのは勘弁してくれと思わずにいられない。頭の中では帰りのルートは往路を戻るか、それともリスク覚悟で東尾根を下るか判断が揺れ始めていた。

 布岩山三角点は長いピークの北端にある。私が使ったルートだと山頂部の激藪を完全縦断しないと三角点に到達しないが、北尾根を使えば最短距離でいけるでそちらが正解だったかもしれない。平坦部分でもちょっとだけ高くなった個所があり(木の根が上がっているだけだったかも?)、その潅木混じりの藪の向こう側に平らな笹藪平原があり、いかにも三角点がありそうな雰囲気。そこに出ると平原だったのは周囲の樹林が刈られていたから! なんと人の手が入っていた。ここまで人の気配は皆無だったが三角点周辺は明らかに藪が刈られている。木の切り口は鋭利でチェーンソー等で切ったのに間違いない。そして真中に三角点。近くの木にピンクリボンがぶら下がっていた。そして藪を刈った形跡とピンクリボンは北尾根に続いていた! やはり北尾根が正解ルートだったのだ。ただし、今回は屋敷山を合わせて登るために両者をつないだが、この藪の感じからすると屋敷山、布岩山は別々に登った方が良さそうだ。1470m峰から山頂まで約400mを30分かかった。蔓無しの根曲竹だけでこの所要時間だから藪の濃さが分かるだろう。

 雨はいつのまにか上がって曇り空。気温は相変わらず高めだがゴアの下の濡れたTシャツがちょっと冷たい。雲で隠れた苗場山方向は展望があるが他は樹林で見えない。ここで本日初のまとまった休憩をとり昼飯を食う。そして帰りのルートを考える。やはりこの藪を逆戻りするのはあまりにも大変だ。リスクは高いが東尾根なら最短距離で林道に出られる。リスクが高い区間は標高差にして約350m。ここさえ乗り切れれば・・・。しかし地形図を見れば見るほど東尾根を正確に下れるのか心配になるような傾斜と地形だった。おまけに1330mには岩マークが・・・。ここは北側の等高線の間隔が広いので北から巻けるだろう、たぶん・・・。

 時間はまだたっぷりある。もし東尾根で途中で行き詰まったら往路を戻ればいい。そう決めて出発。しかしここで最初から躓く。東尾根入口は顕著な地形ではなく傾斜も急で、藪に隠れておそらく目視できない。しかも稜線上の地形は緩やか。地図表示ができるGPSが無いのでここは高度計が頼りだが、どういうわけか高度計が不調で数秒で数10mも標高がコロコロ変わる。ここから東尾根入口までの標高差は約5mなので、これだけ変動があると判別不可能だ。次の手段としてGPSがあるが、GPSも短期安定性はそれほど良くない。少なくとも5mの高度差で高い信頼性があるとは思えない。ここで迷いが生じたが藪との格闘を避けたい気持ちが強く、北上を開始した。

 案の定、木の枝を切断した形跡は北へ続きピンクリボンも残っていた。しかしここを歩いてから数年以上は経過しているだろうし、そもそも完璧な刈り払いではなく極度に邪魔な枝だけ刈ってあるので、見た目にはルートがあるようには見えない。でも確かに周囲よりマシな場所を選んで歩いていると目印が現れ、刃物で切った切り口を持つ枝が出現する。ペットボトルも見られた。

 このまま目印を追うと北尾根を下るはずなので東へ尾根が分岐していそうな東へ膨らんだ場所がないか注意しながら進むとありました! でもGPSの表示は予定より10mほど高度が下がっている。ただしGPSでは誤差の範囲。高度計は相変わらず数10mの範囲でフラフラして全く信頼できない。尾根がありそうなのは間違いないので下ってみることにした。

 意外にはっきりした尾根で一安心。方位磁石で方向を確認してもほぼ東を示している。100%確信が持てたわけではないがおそらく大丈夫だろうと思えた。藪は稜線上より薄くなり根曲竹の密度は低下した。しかし地形図どおり尾根は急で転げ落ちそうだ。尾根が顕著になるまで200mは下らないと分からないのでそのまま下降。しかし稀に背の高い樹林で先が見通せる場所からでも尾根が急すぎて先に繋がる尾根が見えない。そして横(右=南)が見通せる場所に来たときにそちらに顕著な尾根が! あの大きさ、あれが目的の東尾根に間違いない。のっけから間違ってしまった。この傾斜ではこのまま下りるとどんな目に遭うのか予想がつかない。帰ってからGPSの軌跡を確認したら、最初にミスった場所を下りつづけたら崖に出て行き詰まっていたのが分かった。当然、現場ではそれはわからないが、こんな場合は位置が分かる場所まで戻るのが鉄則と自分に言い聞かせて、藪の急斜面を逆戻り。藪のレベルはともかく傾斜が急で疲れる。傾斜がきつ過ぎて隣の尾根へトラバースなど不可能なので一度稜線まで戻る必要があった。

 やっと稜線へ到着。今度は正しい尾根入口を探し当てなければならない。登り返す途中で頻繁に南を見て、尾根入口の位置を確認していた。稜線上は高いブナは少なく根曲竹が主体で、尾根入口付近に立つブナの形状を記憶。正確にはその手前の2本並んだブナを目印とし、次の大きなブナが尾根入口だ。

 目印の点在する根曲竹の稜線を逆戻りし、目標のブナの地点から東へ。樹林が薄い場所から今度こそ下方へ続く尾根の様子を見通すことができ、東尾根に乗ったことを確信。しかしGPSの地図上で確認できるわけではないのでこれはアナログ読図の結果。100%絶対とは言えないが90%くらいの自信はある。あとはこの尾根を外さずに追えるかどうか。この傾斜、しかもはっきりしない尾根なのでかなりの困難が予想される。おまけに藪で先が見えない区間がほとんどだ。

 不明瞭な尾根なので直上にいるかどうか判断はほぼできなかった。藪は細い潅木が混じり今までとは明らかに植生が変わった。でも下部がほとんど見えず尾根のつながりが目で確認できない状況は変わらず、藪との格闘から読図との格闘へ様変わり。

 北ア硫黄岳で使った尾根と同等の急傾斜の尾根で微小尾根の分岐があったり、そもそも尾根上にいるのか分からない状況では方位磁石だけが頼り。しかし見事に数個所で微小尾根に引き込まれた。方位磁石ではほぼ東に進んでいるように見え、枝尾根と主尾根との角度差はほんの僅かしかないようで、おそらく地図表示機能付きGPSを持っていても間違えるだろう。それくらい難しい地形の連続だった。ミスに気付くのは樹林が僅かに開けて周囲が見えるようになり隣に尾根が見えたとき。ここでは周囲が見えないとミスに気付きにくい。しかもあまりに傾斜がきつく谷を越えるのは絶壁を横断するようなもので不可能で、尾根分岐まで正直に登り返す必要がありミスの度に体力を消耗する。

 正直なところ、この尾根は下りでは使うべきではない。あまりにも難しすぎるし、地形図だと枝尾根に入っても下れそうな傾斜表現だが、実際には主尾根両側はかなりの傾斜で強引に下りつづけてもおそらく行き詰まるだろう。ミスれば転落、一巻の終わりだろう。登りで目印を残した状態で下るならまだしも、何もない状態で下るのは無謀だった。

 ただし、今回の下りで正しい尾根を下るヒントは得た(二度と行くことがない私にとっては役立たないが)。まず主尾根上は植生が細い潅木中心であること。尾根を外れると潅木が消えて笹と背の高い樹林になり明らかに植生が変わる。また、迷い込みやすいのは北側で、判断に迷ったらできるだけ南へ進路を取るのがいいようだ。最後に悩んだ微小分岐もこれで正解だった。 

 標高1330mにあったはずの岩を見ることは無かった。標高1150mまで下ればやっと傾斜が緩み、もう尾根をミスっても崖で行き詰まる心配はなくなった。下部には杉が見られるようになり植林帯に入ればさらに安心だろう。このまま尾根を直進するより標高1150m付近から分岐する南東尾根に乗った方が林道歩きを短縮できるのでそこを狙うが、分岐点は地形不明瞭で高度計が使えない今は判断が非常に難しい。これまた樹林の隙間から見える場所で尾根のつながりを確認するしかないだろう。

 杉植林帯に入り藪が薄くなるかと思ったら手入れは全くされておらず逆に今までより歩きづらいし作業道も見当たらない。標高1120m付近で右に進路を振ったが、後でGPSの軌跡を見たらこの時点ですでに尾根を外していた。右にトラバースして乗ったのは東から北へ屈曲する尾根だった。しかしラッキーなことに少し開けた場所から右に顕著な尾根を発見。あれが目的の尾根に違いない。この傾斜ならトラバース可能だろうと植林帯を横移動。目的の尾根に乗る。標高1040mの平坦区間は藪が薄く歩きやすい。尾根突端の1030m峰は大きな倒木あり。ここから南へ針路変更し、林道の法面マークを避けてスノーシェッド入口を目指す。

 1030m峰から下る尾根を辿ると法面行きなので少し戻って小鞍部から谷地形を下る。ここは藪無しで快適、歩きやすい。しかし湿ってきて水が出てくると濡れた岩が登場。コケそうなのでここは左岸を高巻き。この高度では既に藪は薄く斜面を歩くのは苦痛ではなくなったので、滝等のリスクがある谷を避けて左岸側をトラバース気味に下っていった。

 やがて砂防ダム登場。谷を下ったらこれにぶち当たっただろうが、今は左岸の高巻きなのでそのまま何事もなく通過。そのすぐ下に林道が見えたときはうれしかった。最後は急斜面を下ってスノーシェッド入口へ。やった! 無事に帰ってこられた。正確にはまだ車に戻ったわけではないがもう危険個所はない。さんざん苦労したがアナログ読図能力だけで東尾根を無事突破できたのだ。あの硫黄岳より難しかった。あの時は登りで自分の目印を残せたからな。今回は本当に読図能力だけで対処できた。でも二度とやりたくはない経験だ。

 あとは林道歩きだが布岩山山頂から休憩を取っていなかったので道端で休憩。何時の間にか太陽が顔を出し道路を照らしていた。喉はカラカラに渇いて残っていたドリンクを飲み干した。雨具はザックに収納。ただしそのザックはまだ湿っているが。

 登山口までの帰りの途中、大きな柱状節理の岩壁があり、そこに張り付いている岩屋さんがいた。ここは正真正銘の垂直の壁。こんなところを登れるのだから岩屋さんは凄い。

 登山口に到着すると車は私のを含めて3台。自転車は無くなっていた。腹が減って車の中の予備食料を食って腹を落ち着かせ、着替えて全身の藪ゴミを濡れタオルで拭ってさっぱり。今日も強烈な藪漕ぎだったが、最後の東尾根下降の方が強烈で藪のことなどどこかへ吹っ飛んでしまった。今回は素直に往路を戻った方がよかったかな。あそこまで読図で精神的に追い込まれたのは久しぶり。最悪、布岩山に登り返す覚悟でいたが。今後はあのレベルの尾根は下りオンリーで使うのはやめよう。リスクが高すぎる。

 

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